日本高等教育評価機構だより

平成28(2016)年6月22日分掲載

認証評価の周期と評価校数に見る問題点

平成29年度評価申請は80校以上の見通し

平成29(2017)年度認証評価の申請受付けがこの7月から始まる。これに先立ち、当機構の会員校を中心に、当機構で評価を受ける予定などを聞く意向調査を4月に行った。

その結果、75大学・6短大から平成29(2017)年度に申請する予定であると回答があった(大学の評価実施校数の推移は図1を参照)。

昨年の同調査では、平成29(2017)年度申請予定は大学・短大合わせて54校だった。この調査はあくまで予定を聞くものである。実際の申請年度には多少は増加するのではないかと予想していたが、平成30(2018)年度から新評価システムの適用を予定していると案内した影響もあり、結果は大学・短大合わせて27校の増加予定となった。

申請の意向を示した大学等の内訳を昨年の調査結果と比較して見ると、当機構で初めて評価を受ける大学等が増えている。新設校と、1回目の認証評価を他機関で受けた大学等である。

(図1)評価実施大学数の推移

図

※第2サイクル6年目以降は当機構の調査による予定数。

前回評価から6年以内で受けるケースが増加

申請予定数の増加のもう一つの要因は、前回の評価から6年または5年で受ける大学数の増加である。これは第2サイクルで見られる傾向であり、過去には同一法人内の短大との「同時受審」のために前回から4年で受けた大学もあった。

ところで、認証評価制度が始まって十数年が経つが、「次はいつまでに受けるべきか」という問合わせはいまだにある。表1で示すように、認証評価は7年以内ごとに受けることが学校教育法で定められている。

よって前回の評価を平成22(2010)年度に受けた大学等は、平成29(2017)年度には受ける必要がある。

(表1)次回評価年度の考え方

表

※〇は受けることが可能、×は法令違反となることを示す

評価校数の偏りと当機構の課題

当機構の評価実施校数は年度によりかなりの偏りがある。図1を見ると、第1サイクルでは最も多かったのが6年目となる平成22(2010)年度の85大学である。

このような状況が生じたのは、認証評価制度が平成16(2004)年度に発足し、第1サイクルで評価対象となる完成年度を経た大学は、平成22(2010)年度期限で評価を受けることが義務付けられたため、初めて評価を受けることの厳しさや受身的な姿勢もあってか、法律の期限ぎりぎりまで持越した大学等が多かったということである。

この最終年度までの駆込みの結果が、第2サイクルに引継がれており、これを解消するには相当な時間を要すると思われる。

当機構発足時から、この偏りを平準化することが、当機構の運営における課題の一つになっている。

なぜ偏っていることが問題なのか。その理由は、①評価員②評価の実施③事務局体制④財政運営―に問題が生じることにある(表2)。

(表2)評価校数の偏りによる当機構の課題

項目 内容
評価員 ・適切な評価チーム編制が困難
・候補者を推薦する大学等に負担
評価の実施 ・実地調査日程の調整が困難
・研修会や会議の日程・場所の確保が困難
事務局体制 ・必要な人員数の確保が困難
財政運営 ・収入・支出の年度ごとの偏りによる
財務運営上の困難性

①の評価員は、評価校数が多い年度にその確保が困難になることである。評価対象1校につき5人程度の評価員でチームを組んで評価にあたるので、80大学を実施する年度には80チーム、約400人の評価員が必要になる。

当機構では現在、会員校等から推薦された約800人の評価員候補者が登録されている。800人もの方々に協力を表明していただいていることにまず感謝したい。ただし、800人の登録があっても、そこから400人80チームを編制するのは極めて難しい状況である。対象校の学部構成、規模、所在地といった特徴と、評価員の専門分野、評価員経験の有無など、様々な条件を組合わせて編制するからである。

②も、評価校数が多い年度に問題になる。主に、実地調査や会議などの日程調整である。

実地調査は、例年9月下旬から11月中旬くらいまでの約8週の間で実施される。大学等の夏季休暇や書面調査の実施期間、そして、年度内に評価結果を確定・公表するためにはこれ以上の期間拡大は難しい。80校の実地調査を8週間で行うには、1週間で10校を設定することになる。各校には行事や入試、演習・実習等、実地調査を受入れられない日程もあり、それを考慮するのが困難になる。

また、評価員の研修や次年度評価申請校の説明会、実地調査の前後に行われる評価員会議なども同様に、日程の調整や会議室の確保等が困難な状態に陥る。

③の事務局体制については、当機構では評価対象校ごとに担当者を配置することで、対象校や評価チームとのきめ細かいコミュニケーションを可能にしている。これは当機構の特色の一つと考えている。80大学と10大学では必要な人員数が大きく異なるが、事務局の職員を年度に応じて増減させることはできない。

そこで、評価人材の育成の観点から、会員校の教職員を研修員(今年度は13人)として受入れ、高等教育の法令や大学運営等に理解を深めることを目的に、専任職員と一体になって評価業務に従事してもらうこととしている。中央教育審議会でも評価人材の育成は非常に重要であり、認証評価機関との人材の交流は非常に有効であると指摘している。

④の財政については、評価校数の大幅な増減により、それに応じた年度別の収入財源に大きな偏りが生じ、当機構の財政運営の観点から大きな課題になっている。

当機構を運営するための財源は会費と評価料のみで、国等からの補助や援助は一切ない。会費は経常的な収入となるが、肝心の評価料収入は、評価対象校が80校から翌年度には10校にまで一気に変動することで、収入が億単位で激減し、法人の財務運営を困難にしている。公益法人会計基準を超える問題であり、大変な苦労が続いている状況にある。

評価制度上の課題として検討を

評価校数の偏りが及ぼす影響について述べてきたが、現実的な対応策は現在のところ模索中である。ただし、この3月に中央教育審議会大学分科会が発表した「認証評価制度の充実に向けて(審議のまとめ)」に、「評価校数の平準化」が提言されたのは、大きな一歩であろう。今後、認証評価制度の安定的な運用という観点から、認証評価機関共通の課題としての取組みが期待されている。

(評価研究部評価研究課課長 小林澄子)

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