日本高等教育評価機構だより

平成29(2017)年11月22日分掲載

上海民弁教育評価センターと上海の民弁大学への訪問

日本高等教育評価機構(以下、「評価機構」という。)では、評価システムの策定や改善のために、国内外の評価機関や大学の実情を調査研究するとともに、海外の評価機関などとの国際交流の促進を図っている。

評価機構は、海外の評価機関と協定を結び、質保証に関する情報交換、双方の機関の評価実施や事業への参画等、高等教育の質保証に関連する取組みにおいて相互に協力を行っている。

2016年11月にはフィリピンと、12月には韓国の評価機関とそれぞれ協定を締結した。これらの活動に引続き、新たな海外の評価機関との交流の拡大を図るため、今年の四月に、評価機構の伊藤敏弘事務局長のほか、板垣智香評価事業部主任と筆者が、中国の上海市にある上海民弁教育評価センター(Shanghai Association for Non-Government Educational Evaluation Center)(民弁=私立)並びに上海工商外国語職業学院、上海杉達(SANDA)学院の二つの私立大学を訪問した。ここでは、同センターの概要や実績及び上海の私立大学の教育に関する質保証の仕組みなどを紹介する。

上海民弁教育評価センターの評価に関する取組み

上海市を中心に私立学校の評価を実施している団体である同センターを訪問し、江彦橋(Jiang Yanqiao)センター長をはじめ、関係者から同センターの概要や評価の実績などについて伺った。

1949年以降、中国では国・公立大学を中心とした高等教育を展開している。一方、私立である民弁学校(大学を含む)はその約40年後の1982年以降に設置し始めた。特に民弁大学は、校数は少なく、かつ小規模校が中心である。

中国では、教育部の主導のもと、約20年前から大学などに対する評価を開始したが、民弁大学が、国・公立大学と同様な評価を受ける場合、人的・物的資源などに大きな差が生じ、民弁大学の特色・特徴などが埋もれてしまう可能性がある。このような状況を踏まえ、中国民弁教育協会(民弁教育の促進及び発展をさせるために全国の民弁教育機関及び関係者により2008年に設立された非営利社団法人)では、民弁教育機関を対象とした評価団体の必要性を認識し、2012年に上海民弁教育評価センターを設置した。

まず、上海市にある民弁教育機関に対する評価への試みに着手した。同センターは認証部、研究部、発展部(総務関係)の3部門で、約30名の民弁教育の専門家で組織されている。

同センターが設置されて間もないため、民弁大学への評価の実施には至っていないが、上海にある12校の民弁高等技術学院(3年制高等専門学校)に対する専門評価は実施している。上海市政府もその実績を認めており、今後、全国での展開が計画されている。その他、上海市政府の協力のもと、民間の各種学校や機関(学位を出す資格のない学校など)、インターナショナルスクールなどの認証事業を行っており、これまで20校以上の認証の実績がある。

同センターの概要を伺った後、上海市教育委員会の高徳毅(Gao Deyi)主任をはじめ、多くの民弁教育の関係者を交えた座談会が開かれた。最初に、伊藤局長から日本の認証評価制度の説明を行い、続いて筆者から評価機構の評価システムについて解説を行った。私立大学を中心とした評価を展開している評価機構の評価システムを中心に、上海側の関係者から多くの質疑応答があり、活発な意見交換が行われた。

上海民弁教育評価センターでの座談会の様子

上海民弁教育評価センターでの座談会の様子

上海の民弁大学の内部質保証への取組み

翌日、江センター長の紹介で、上海市の近郊にある二つの民弁大学を訪問し、大学の内部質保証の仕組みなどを中心にインタビューを行った。

上海工商外国語職業学院

同学院では、姜海山(Jiang Haishan)学院長などの関係者から話しを伺った。同学院は2001年に設立され、24の学科に約8,000人の学生が在籍している。

教育の質保証に関するさまざまな取組みについては、主に二つの部門を中心に行っている。一つは教務部門、もう一つは教育に関する内部監査部門である。

教務部門では、主に学生、教職員、カリキュラムに関する情報をデータベース(教育部が開発したシステム)においてリアルタイムで管理し、必要に応じて各種情報の提供を行っている。内部監察部門では、授業内容、試験内容、評価方法及び結果の管理について監督している。問題があれば、学長や教務部門に報告し、必要に応じて改善を行うシステムとなっている。内容によっては、該当する教員への人事評価に影響を及ぼす場合もある。

その他、大学は独自に実施した外部評価や教職員や学生へのアンケート調査の結果を学生にも公表し、大学の改革・改善に生かしている。

上海杉達(SANDA)学院

同学院は、1992年に設置され、商学部を中心に約1万3,000人の学生が勉学に励んでいる。

ここでは、馮偉国(Feng Weiguo)副学長に話を聞くことができた。同氏によると、学院の内部質保証の体制は主に3段階に分かれている。

まずは各学部の教務課を中心に、あらゆる文書管理(エビデンスの収集)を行い、次に大学全体の管理部門として、教学、学生、教職員などそれぞれの領域に副学長を置き、監督員(教員または専任職員)とともに、教育内容などのチェック体制を強化しながら、最終的には学長のもと教育の改善・向上を図っている。

また、大学をより良くするためには、学生からの意見が最重要であることを考え、各学部から「連絡係」を任命し、月1回「連絡係」の学生と大学関係者との定例会を実施し、意見交換などを行っている。さらに、年4回程度、学内新聞に「連絡係」よる大学が教育や学生生活のことなどについて良く取組んでいることと不足している点などを公表している。

今回の訪問を通じて、上海の民弁学校に関する評価の実情を知ることや民弁教育機関の管理運営などに関する問題意識を共有することができた。上海民弁教育評価センターとの交流を一層展開し、互いの共通理解を深めることにより、双方がより良い評価システムを構築することができると確信している。また、上海の民弁大学の教育に関する質保証の仕組み、特に質保証に関する監督部門の設置や学生の積極的な関わりなど、日本の大学が学ぶべきことが多くあると感じた。

(陸鐘旻 評価事業部長)

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