日本高等教育評価機構だより

平成30(2018)年10月24日分掲載

初めて分野別評価の視点から議論
高等教育質保証学会第8回大会開催

8月25日(土)、26日(日)の2日間、高等教育質保証学会第8回大会が中央大学後楽園キャンパスにおいて開催された。教員養成、認証評価、専門分野別評価など、さまざまな視点から分野別質保証についての発表があり、活発なディスカッションが行われた。

実行委員として大会運営に、また幹事として学会の運営に携わった立場から、大会と学会の運営について報告する。

将来構想部会「中間まとめ」から課題を提示

今大会は、「大学の内部質保証、外部質保証を分野別評価の視点から考える」をテーマに掲げ、基調講演、三つのセッション、そしてポスターセッションが行われた。

最初のプログラムである基調講演は、永田恭介氏(大学基準協会会長、筑波大学学長)が「我が国の大学改革と教育質保証の方向性」をテーマに行った。中央教育審議会大学分科会将来構想部会において、部会長としてその議論をけん引する永田氏は、この6月に同部会が発表した「今後の高等教育の将来像の提示に向けた中間まとめ」の内容について解説し、高等教育の質保証システムが抱える課題や今後の方向性などを示した。

続くセッション1は「教職課程、その質保証の現在と今後を考える~再課程認定後の教員養成教育の質をどう確保し保証していくのか~」で、柳澤好治氏(文部科学省初等中等教育局教職員課長)、牛渡淳氏(仙台白百合女子大学人間学部人間発達学科長(教授))、西田恵二氏(大阪府教育庁教育振興室高等学校課参事)、渡邊恵子氏(国立教育政策研究所教育政策・評価研究部長)による事例報告のあと、八尾坂修氏(開智国際大学教育学部教授)をモデレータとして課題の共有、意見交換が行われた。

午後には8組がエントリーしてポスターセッションが行われた。1時間という限られた時間でありながら、多くの参加者がポスターセッション会場を訪れ、積極的に質問をする姿が見られた。

夕方は、参加者の情報交換会が開かれた。会の中盤には会場校である中央大学の福原紀彦学長が挨拶のために駆け付け、大きな拍手が沸き起こった。

工学、医学などの評価機関が報告

明けて2日目はまず、認証評価セッション「認証評価における分野別評価の考え方~内部質保証、外部質保証の両側面から~」が行われた。橋本孝志氏(大学基準協会評価事業部長)、土屋俊氏(大学改革支援・学位授与機構研究開発部特任教授)、陸鐘旻氏(日本高等教育評価機構評価事業部長兼評価研究部次長)、原田博史氏(岡山短期大学理事長・学長、短期大学基準協会副理事長)が、それぞれの認証評価機関における分野別評価の現状や方針を解説した後、前田早苗氏(千葉大学国際教養学部教授)の進行でディスカッションが行われた。

最後はセッション2「専門分野別質保証の展開」で、青島泰之氏(日本技術者教育認定機構専務理事)、奈良信雄氏(日本医学教育評価機構常勤理事)、中村明弘氏(薬学教育評価機構基準・要綱検討委員会委員長、昭和大学薬学部長)、後藤昭氏(日弁連法務研究財団評価委員会委員長、青山学院大学法務研究科教授)がそれぞれの分野の評価について報告した。その後に行われたディスカッションのモデレータは、工藤潤氏(大学基準協会事務局長)が務めた。

「一貫した議論の展開」に手応え

過去7回の大会テーマをみると(表参照)、その時々の話題となったトピックや注目の政策など、時勢を反映したものであることがわかる。その中で、「分野別評価」を中心にすえて議論をしたのは、この第8回大会が初めてであった。

テーマを設定した実行委員会委員長の早田幸政氏(中央大学理工学部教授)は、分野別評価への理解は多様であるものの、「初日の教職課程、2日目の認証評価、専門分野別評価と、異なる立場のセッションにおいて一貫した議論が展開された」と高く評価した。また、「教職課程の再課程認定は今後、教職課程の評価に展開され、これは大学全体の質保証につながる」とし、分野別の質保証については引き続き、学会などで取り上げ、根付かせていくことが重要だと総括した。

新体制による更なる発展を期待

高等教育質保証学会が誕生した2010年は、2004年から始まった認証評価制度7年周期の第1サイクルの最終年にあたる。認証評価が大学現場に浸透していく中、高等教育研究者や認証評価機関では「質保証が学問分野として確立されて有効な研究が行われ、その結果が共有されることが、今後の高等教育の発展には不可欠」との認識が高まっていた。高等教育質保証学会は、その経緯から、認証評価機関が中心となり設立されたものである。設立発起人には認証評価機関の当時の長が名を連ねる。

会員種別は正会員(個人)、学生会員、団体会員、賛助会員がある。正会員には、高等教育の研究者をはじめ、大学や評価機関の職員、マスメディア関係者などがいる。団体会員は、その構成員を3人まで学会に派遣できるもので、多くの大学、短期大学、高等専門学校、評価機関などが登録している。

幹事として2年、学会の運営のお手伝いをさせていただいた。役員や会員の方々の多大な協力を得て、順調に運営されているが、誕生して10年足らずの若い学会ゆえ、知名度が低く、ここ数年は会員数が伸び悩んでいる。大会以外の活動については課題もある。

今大会中に開かれた評議員会・総会において、役員が改選され、学会第5代会長に原田博史氏(岡山短期大学理事長・学長)が選出された。第9回大会は、来年2019年8月24日(土)、25日(日)に渋井進実行委員会委員長(大学改革支援・学位授与機構准教授)のもと、國學院大學渋谷キャンパスで開催されることが決定している。今後、質保証についての議論がより深まり、高等教育質保証学会が発展することを期待したい。

(評価研究部評価研究課課長・小林澄子)

表 高等教育質保証学会 大会テーマ一覧

テーマ 会場 実施年
第1回 「新しい質保証を目指して」 東京大学 2011年
第2回 「質保証の国際通用性」 東京大学 2012年
第3回 「高等教育質保証の方向性を探る」 京都大学 2013年
第4回 (全体テーマなし)「グローバル化と質保証」ほか 成城大学 2014年
第5回 「高等教育機関の地域貢献と質保証」 新潟大学 2015年
第6回 「内部質保証と三つのポリシー」 東洋大学 2016年
第7回 「大学教育等の質的転換(新たな環境と新たな学び)をいかに捉え、質保証するか」 大阪大学 2017年
第8回 「大学の内部質保証、外部質保証を分野別評価の視点から考える」 中央大学 2018年

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