令和2(2020)年4月22日分掲載
3回目の認証評価受審で改善点が大幅に減少
―令和元年度の評価結果等について―
公益財団法人日本高等教育評価機構(以下「評価機構」という。)は、令和2年3月26日に令和元年度の機関別認証評価結果を公表した。本稿では、受審校の優れた取組みや改善事項に関する指摘などから、昨年度の認証評価の特徴などを振返ってみたい。
認証評価等の実施概要
評価機構では、平成30年度から、大学等の質的転換や内部質保証の確立の状況を重視した評価制度へ転換し、評価システムの大幅な見直しを行った。認証評価第3期の2年目となる令和元年度は、17大学と1短期大学の認証評価を実施した。その結果、全ての大学及び短期大学が「適合」となった。
そのほか、平成29年度の認証評価において「保留」となった2大学と1短期大学の再評価を行い、その結果2大学が「不適合」、1短期大学は「適合」となった。「不適合」の要因は、財政基盤の確立についての改善や収容定員の充足率の低さであった。
「改善を要する点」が大幅に減少
令和元年度では、多くの大学が3回目の認証評価受審となり、それらの自己点検評価書からも過去の評価結果等を通して、不断な改革・改善が進められていることが確認できる。そのため、初めて受審する大学が多かった平成30年度の15大学と比べてみると、大学数はほぼ同数であるが、表1のように、令和元年度は「改善を要する点」の指摘が減少した。
「改善を要する点」の内容を基準ごとに見てみると、最も多かった6件は基準4の「教員・職員」関連で、そのほとんどが学長のガバナンス機能に関する規則等の整備に関する内容であった。近年指摘が多く上がっているこの内容については、今後セミナー等において重点的に説明するなど、引続き対策を講じて行きたいと考えている。
評価機構では、平成30年度からの新評価システムにおいて、基準6「内部質保証」を重点評価項目として設定し、他の基準において、「改善を要する点」の内容が内部質保証システムの機能性に関する問題であった場合、その基準のみならず、基準6においても併せて指摘することとしている。今回の3件はその関連の指摘であった。
なお、「改善を要する点」の指摘があった大学に対して、今後3年以内に改善報告書を大学のホームページに公表するとともに、エビデンスなどを含め、評価機構への提出を求めた。
表1 「改善を要する点」の比較(数値は件数、短期大学を除く)
多様な「優れた点」
一方、「優れた点」の指摘件数は表2のように、平成30年度と比べて、多くの「優れた点」が取り上げられた。
令和元年度も平成30年度同様に、基準2の「学生」の「優れた点」がもっとも多かった。主な「優れた点」として、「アドミッション・ポリシーの理解促進のみならず、高校生が成長できる機会として、『大学選び入門講座』サイトの開設や『AO・推薦準備セミナー』『じぶん探究プログラム』を積極的に実施していることは評価できる」、「担当教員・副査・副指導教員の3人による相談体制をとり、一定回数以上休んだ学生へのフォローを行う他、全ての講義を録画し、復習や欠席した講義の視聴に活用するなど学修支援の充実が図られている点は高く評価できる」、「学生寮について、留学生と日本人学生が同居して衣食住に関わる文化の違いを肌で感じることができる国際寮のほか、英語圏の国際協定校への留学に備えて個別面談や文化イベント等の指導を受けられる女子寮があり、日常生活の支援にとどまらず言葉と文化を学べることは高く評価できる。」、「各年度、学生主体の授業づくりのためのFD研修会において、『主体的・対話的な深い学びを実現するための授業のかたち』をテーマに掲げ、学生参画のもと教員とのグループ討論を実施し、その成果を報告書『SUFD Report』として毎年発行していることは評価できる」など、多くの基準項目にわたって特徴ある取組みが挙げられた。
基準3及び基準4にも多くの「優れた点」があった。特に第3期に新たに設けた基準項目である「学修成果」に関し、「ディプロマ・ポリシーに基づく課程修了時の資質・能力を学修目標として設定し、それに対する到達度合いを尺度で示す評価基準表として作成したルーブリック評価を学期ごとに行って学生の学修成果を把握し、当該学生の学修目標に対する到達度を客観的に評価して今後の学修計画に必要な指導・助言を行っていることは評価できる」、「全ての授業科目でアクティブ・ラーニングを行い、学びと教育のプロセスを可視化する『ポートフォリオ』を日常的に活用することにより、ホスピタリティ・ルーブリックを用いたディプロマ・ポリシーの達成度の評価が定期的に行われている点は高く評価できる」などの「優れた点」があった。また、重点評価項目である「内部質保証」について、責任ある質保証体制の構築や特徴ある自己点検・評価活動に関する「優れた点」もあった。
令和元年度に行った1短期大学の認証評価では、「改善を要する点」はなく、学修支援のための諸施設の整備や特徴ある教養教育の実施など、複数の「優れた点」があった。
評価機構のホームページでは、受審校の全ての「優れた点」を毎年度の評価結果とともに公表しているので、ぜひ参考にされたい。
令和元年度の評価結果を全体的にみると、多くの大学が自己点検・評価や認証評価を通して、自ら改革・改善の多様な取組みを行うことによって、内部質保証活動に一定の成果を挙げていると認められる。各指摘事項に関し、規則の整備など一部改善が必要なものがある一方、全基準にわたって、大学の教学及び運営面にさまざまな工夫がなされ、「優れた点」の多さが目立った。
(評価事業部長 陸鐘旻)
表2 「優れた点」の比較(数値は件数、短期大学を除く)