令和2(2020)年10月28日分掲載
認証評価準備としての自己点検・評価の進め方
長崎国際大学の場合
はじめに
長崎国際大学における認証評価受審の特色は、①全学体制で取り組む、②教職協働で点検・評価する、③自己点検・評価の延長に認証評価を位置づけることで、「評価疲れ」や、「評価のための評価」とならないように、そして何より教育の質保証のための点検・評価であるために、以上の3点を心がけ取り組んでいる。
長崎国際大学の概要
長崎国際大学(以下「本学」という)は、平成12(2000)年4月に長崎県と佐世保市等からの支援を受け、公私協力方式で開設された私立大学で、長崎県佐世保市ハウステンボス町に所在している。学部構成は、人間社会学部国際観光学科、社会福祉学科、健康管理学部健康栄養学科、薬学部薬学科(6年制)の3学部4学科、大学院は3研究科4専攻で、2,352人が在籍しており、地域に根ざした教育を目指している。今年でちょうど開学20年の節目を迎えたばかりの歴史が浅い地方大学でもある。
本学では開学以来、自己点検・評価を2年に1度の周期で実施しており、認証評価は、第1クールから今回の第3クールまで、日本高等教育評価機構で受審している。令和元(2019)年度に第3クールを受審し、本年3月に適合の認定評価をいただいた。
自己点検・評価の進め方
本学では、受審する前年度に、平成29(2017)年度から平成30(2018)年度の自己点検・評価を第3クールと同じ評価項目で実施した。
前述したように、2年に1度、自己点検・評価を実施している。その自己点検・評価の評価項目は、開学当初は独自に評価項目を設定し実施していたが、認証評価を受審するようになってからは、日本高等教育評価機構の評価項目を準用している。これにより、点検・評価に携わる関係者の評価項目への理解度が深まり、点検・評価が実施しやすいこと、また、改善点等の対応が経年で確認しやすいというメリットを生んでいる。ただし、2年に1度の自己点検・評価は、認証評価とは違い、報告書のページ数に制限等は設けていない。従って、ページ制限にとらわれることなく、自由にそして詳細にわたって記述している。認証評価受審時は、この自己点検・評価を基に、各基準をどれ位の割合でページ配分するか、どの項目のどの部分の記述を残すかを検討し、認証評価の報告書の100ページ制限に対応している。
自己点検・評価の推進体制
2年に1度の自己点検・評価も7年に1度の認証評価も「自己点検・評価委員会」が中心となり点検・評価している。自己点検・評価委員会は、委員長を職指定の学長として、学長の責任において、「長崎国際大学における点検及び評価に関する規程」に基づき、適切にPDCAサイクルを循環させることを目的としている。具体的活動として、原則毎月1回委員会メンバーが招集され、内部質保証の検証を行うとともに、点検・評価の結果を2年に1度報告書にまとめ「自己点検・評価報告書」として刊行し、改革・改善につなげている。
自己点検・評価委員会の構成は、委員長以下、教員より副学長、各学科長、各学科選出の委員、事務職員より事務局長と大学評価・IR室長で構成され、教職協働の組織となっている。
加えて、点検・評価の根拠となるデータは、「IRセンター」が集計・分析を行っている。IRセンター長は、自己点検・評価委員会副委員長である副学長を職指定で充てており、IRセンターでの集計・分析の結果は、自己点検・評価委員会や各学部等へ報告している。このIRセンターは、機関調査等(在学生調査、学生による授業アンケート、卒業生調査、保護者懇談会アンケート等)により、大学、学生及びステークホルダー等の現状や要望・課題を把握・抽出する部門であり、内部質保証を機能させる上で重要な役割を担う部門として位置づけられている。
このように、本学では、大学・大学院の現状を自己点検・評価委員会及びIRセンターが推進役となりエビデンスに基づき点検・評価を実施し、委員会、学部及び全学教授会等がそれぞれPDCAサイクルを循環させ、内部質保証の改善・充実のための体制を構築している。また、点検・評価を行う各種委員会も、教員と事務職員で構成されている。
認証評価受審のスケジュールとデータ編に関して
認証評価を受審する準備段階として、受審年度の前年12月頃に、2年に1度の自己点検・評価が終了して、ページ制限のない報告書案がとりまとめられていた。認証評価の報告書は、この報告書案をもとに自己点検・評価委員会において、各基準のページ割を決定し、独自基準と特記事項に何を記述するか、また各基準間で齟齬や重複がないかなど慎重に協議・精査を行った。これにともない、各基準の担当者は、自己点検・評価委員と共に、翌年3月末までに指定されたページ数で報告書をまとめなおした。
さらに、年度が変わってから5月末までに、この報告書を5月1日現在の数値等に修正し、記述内容も基準日と照らしあわせて再度点検を実施し、認証評価の自己点検・評価報告書のファイナルドラフトとした。このファイナルドラフトに、自己点検・評価委員会において、自己判定を付与し、事実の説明及び自己評価の内容及び文章表現を含めて点検した。更に、改善・向上方策(将来計画)が妥当であるか最終評価を行った。
認証評価のデータ編に関しては、認証評価受審年度だけでなく、毎年、5月1日現在で認証評価の様式に従い、担当部署及び大学評価・IR室でとりまとめIRセンターへ報告している。自己点検・評価報告書は2年に1度刊行しているが、このデータ編に関しては、毎年印刷刊行し学内で共有している。これにより、認証評価受審年度に過去に遡って数字を追い、まとめ直す手間を省くことができ、また担当者も集計に慣れ、集計ミス・記載ミス等の軽減にもつながっている。
まとめ
2年ごとの自己点検・評価も7年に1度の認証評価も、点検・評価を推進するのは、自己点検・評価委員会であるが、点検・評価を具体的に実施するのは各部局や委員会であり、決して一部の担当者で進めているのではなく大学全体で取り組んでいる。この点は本学の大きな特徴である。
各学部・学科そして各委員会においても教員と事務職員が担当として係わっており、従って、それぞれの基準で教員と職員が教職協働で点検・評価を実施して、その後報告書の原案を作成することとなる。その原案を自己点検・評価委員会の委員が点検・評価として査読し、根拠資料を確認しながら必要な箇所には意見を付して、担当へ戻している。各担当の教員と職員は、意見が付された事項に対して協議・確認等を行い、必要に応じて加筆・修正を行い、成案を作成している。
本学では、認証評価は7年ごとの一大イベントではなく、2年に1度の自己点検・評価の延長上に位置づけている。自己点検・評価は、日頃より教員と職員が協力して点検・評価する教職協働の大学運営であり、繰り返しにはなるが、大学全体で取り組む質保証のための点検・評価と捉えている。
これらが本学の認証評価への取組みの特色であり、適切なPDCAサイクルを回し続けるエンジンと考えている。
(学校法人九州文化学園法人本部長 安部雅隆)