日本高等教育評価機構だより

令和4(2022)年7月27日分掲載

令和3年度認証評価における同時受審を経験して

1.はじめに~学内体制を含めて

比治山大学・大学院(以下、「大学」)と比治山大学短期大学部(以下、「短大」)は、日本高等教育評価機構(以下、「JIHEE」)による平成30年度第3期評価システムからの短期大学機関別認証評価の実施を機に、JIHEEの認証評価体制(大学・短大の同一基準)、同時受審のメリット(受審業務の負担軽減・効率化、大学・短大を合わせた観点での点検評価)等を考慮して同時受審へと至った。

本稿では、大学と短大がJIHEEによって示された同時受審大学及び短期大学の共通点「大学・短大が同一キャンパス」「事務組織が共通」「同一日程で実地調査を実施」と一致しているということを踏まえての令和3年度認証評価における同時受審の経験を振り返る。

大学・短大の自己点検評価の責任を負う組織は「運営戦略本部(本部長:学長)」であるが、その主要な支援組織は、「高等教育研究開発センター(センター長:学長)」の「評価・IR部門(部門長:大学・教育改革担当副学長)」であり、その事務所掌は学長室である。

そのために、同時受審にあたっては、その対応を大学・教育改革担当副学長と学長室長を軸に進めることとした。

2.自己点検評価書等の作成

認証評価の基準2(学生)の学生、基準3(教育課程)の教育課程以外の基準、特記事項及び動画資料(オンラインによる受審のため)については、大学・短大ともに、それぞれの独自性に注意しながらも、大学・教育改革担当副学長と学長室長が軸となって検討した。基準2・基準3についても、大学・短大の書式を統一して、学部長・研究科長・短大部長、並びに大学・短大から選出した評価委員(教員)の記述や意見を精査した。また、詳細情報が必要な場合は、各学部・学科等、センター・委員会・事務局から情報収集した。

このような作業により、大学・短大の書式・分量を調整することができ、記述内容の整合性を保つことができた。

自己点検評価書等の作成については効率的に行うことができ、結果として作業量・時間の軽減につながった。

とは言え、コロナ禍でのオンラインによる受審となったために、規程・議事録のPDF化、動画資料の作成等で業務負担が増えたことはやむを得ない。

3.書面質問及び依頼事項への対応

大学・短大で同じ内容の書面質問及び依頼事項があり、普段の自己点検では気づかない部分を見出すことができた。

しかし、全体的に見れば、大学・短大の双方の評価員から同時に書面質問及び依頼事項が送られてくるので、共通の質問・依頼はあるものの、情報収集・検討・回答作成等に要する作業量・時間に、学内で承認を得る時間を加えると、「2週間以内」での提出は時間的制約が気になる事案であった。

4.実地調査(オンライン)への対応

日常的に大学・短大を横断して各分野(入試、教学、キャリア支援等)を所掌している副学長が実地調査への対応をおこなったので、応答については、円滑に実施できた。

しかし、同時受審に際しては、大学と短大の関係性について自己点検評価書等で具体的に明記すべきだったかと反省している。

例えば、「共通教育を中心とした授業担当教員の相互の兼担」のような大学・短大双方に関連する仕組みについては、あらかじめ評価員に知っておいていただかないと、議論が噛み合わなくなることもあり得る。

また、規程等の名称に、「比治山大学」と冠したり、「比治山大学・比治山大学短期大学部」と冠したりして、評価員を戸惑わせ、大学・短大共通の規程と独自の規程を明確にするようにとの指摘があった。慣例的に規程名を記していた点についてはあらかじめ説明が必要であったが、大学・短大の独自性を再認識する良い機会となった。規程等の整備において希薄になりがちな線引きを明確にすることに気づかされた一場面である。

5.まとめ

冒頭に記述した大学・短大の状況を前提とした同時受審の経験から、同時受審のメリットを享受するためには、つぎのような配慮が必要と思われる。

・大学・短大を横断した役職(副学長、学長室長等)を軸にして、全体を俯瞰しながら対応することにより整合性を保つ。

・評価基準によっては、法人関係(基準5)のように共通する部分があるので、大学・短大の受審手続き(学内手続きを含む)を一体的に進めることにより作業の効率化を図る。

・大学・短大の双方の評価員から同時に書面質問及び依頼事項を求められるので、定められた条件を満たすためにも、情報収集・検討・作成・学内承認等のステップの迅速化を図る。

・日常的に協働的な活動を行っている場合でも、「大学と短大それぞれの文化」を十分に説明しておくことで、大学と短大の関係性・独自性を明示する。

6.最後に

このような経緯を経て、JIHEEから、令和4年3月に大学・短大ともに、評価基準に「適合」しているとの認定をいただいた。認定証、評価報告書を受領し、大学・短大のホームページで双方の自己点検評価書とともに、公開することができた。

同時受審という有意義ではあるが、一時的にハードな活動、しかもコロナ禍での活動に従事された大学・短大・事務局の関係者には、あらためてお礼を申し上げたい。
(比治山大学・比治山大学短期大学部学長補佐兼短大部長 谷川宮次)

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