日本高等教育評価機構だより

令和6(2024)年4月24日分掲載

短期大学の優れた取組み
令和5年度の評価結果から

公益財団法人日本高等教育評価機構(以下「評価機構」という。)では、令和6年3月25日に評価機構ホームページにおいて令和5年度の認証評価の結果を公表した。令和5年度の短期大学受審校数は過去最多の9校であった。このため、本稿では全体の概要と短期大学の優れた取組みを中心に評価結果を振返ってみたい。

認証評価の実施概要

令和5年度は、70大学の機関別認証評価を実施した結果、68大学が「適合」となった。1大学は、大学全体の収容定員充足率が低く、もう1大学では、学修成果の点検・評価に大きな課題があったため、計2大学が「不適合」となった。短期大学では、9校評価を実施した結果、全てが「適合」となった。

評価機構の短期大学の評価は、平成21年に文部科学大臣より認証され、平成25年度から令和5年度までに延べ37短期大学の認証評価を行ってきた。令和5年度は、短期大学1校を除き、8校が同一法人の大学と同年度に認証評価を受けた(同時受審)のが特徴である。

全ての基準に特色あり

令和5年度に受審した短期大学のほとんどが小規模校であるが、認証評価では、6つの基準全てにおいて「優れた点」があった。

「基準1.使命・目的等」では、「1年次の必修科目として「キリスト教保育」を開講し、「子ども」を神の国の中心として捉えるキリスト教保育の理解を深め、学生の自己形成を深める積極的取組みは評価できる。」と、建学の精神への理解を促し、学生の人間形成への取組みが積極的であると見て取れる。

「基準2.学生」では、「障がい等を有する学生への支援に関する基本方針を整備し、教員とキャンパスライフ支援室が協働しながら障がいのある学生や合理的配慮を必要とする学生へきめ細かい支援を行っていることは、高く評価できる。」、「在学生、卒業生の学び直し、学びの継続を支援する方策、短期大学の卒業生に生涯を通じた活躍支援を行う人財バンクを設け、在学生のみならず卒業生に対しても生涯学び続けられるようキャリア支援を行っていることは評価できる。」、「給付型奨学金「作文チャレンジ支援制度」等の独自の奨学金制度を設け、積極的な経済的支援を行っていることは評価できる。」など、学修、キャリア及び経済の多方面から学生を支援していることが評価された。

「基準3.教育課程」では、「カリキュラムツリーにより授業科目とディプロマ・ポリシーとの関連を理解しながら体系的に学修できることは、教授法の工夫として評価できる。」、「ディプロマ・ポリシー達成度評価シートによって学生が個々の授業科目で、ディプロマ・ポリシーに示された能力開発目標の達成度を自己評価できる仕組みが導入されており、学修成果が可視化できていることは高く評価できる。」など、特色ある教授法や学修成果の可視化への取組みが取上げられた。

「基準4.教員・職員」では、「短期大学独自のFD・SD活動として、短期大学に即したテーマの勉強会や学生FD・SD勉強会を毎年度実施しており、特に学生FD・SD勉強会では、学生からの丁寧な意見聴取が行われており、評価できる。」、「科学研究費助成事業獲得の促進を目的として、獲得者に対して、その評価に見合った金額を成果報酬として賞与へ反映していることは評価できる。」など、短期大学独自の教職員研修や研究支援の方策があった。

「基準5.経営・管理と財務」では、「理事長と各所属長が毎月1回定例で、教学面や管理運営面の諸課題について意見交換する懇話会を実施している点は、評価できる。」、「監事会の定期的な開催や監事と会計監査人との情報交換会など、監事、会計監査人及び監査室との連携や意思疎通が活発に図られている点は、高く評価できる。」など、法人運営の円滑化への取組みが評価チームの目に留まった。

「基準6.内部質保証」では、「関係団体懇談会の設置、併設大学との間での相互評価は、自己点検・評価の客観性や妥当性でチェックを受け、自己点検・評価の有効性を高める仕組みとして高く評価できる。」など、自己点検・評価の特色ある仕組みが注目された。

同時受審の更なる推進

評価機構では、大学と短期大学の評価基準が共通であること、評価機構で受審している短期大学の多くは同一法人内の大学と共通のキャンパスを使用していることなどにより、評価の効率化・省力化が可能となるため、受審校の負担軽減などの観点から、同時受審を進めてきた。

評価機構が毎年度行っている受審校へのアンケート調査では、令和5年度に回答した同時受審の7短期大学中の6校から、大学との同時受審により、評価作業が効率化・省力化になったとの回答があった。第4期認証評価においても、受審校と評価員双方の負担軽減のため、より一層の評価の効率化を進めるにあたり、同時受審の在り方などについても今後検討する予定である。

大学との共通点や法人としての課題が残る

短期大学9校の評価報告書で「改善を要する点」として指摘されている事項は、大学と比べて数的にはそれほど多くなく、短期大学独自の指摘もほとんどない。

主な指摘内容は、同法人の大学と同様に指摘された学長のガバナンスの問題や理事会や評議員会での重要事項の審議方法などが規則等に遵守していないなど、法人運営の課題と、それらを起因とする内部質保証に関する指摘であった。

総じて、令和5年度の短期大学の評価結果をまとめると、全ての基準に各種特色ある取組みが挙げられている一方、大学との共通点や法人に関連する諸課題が残った。

大学機関別認証評価の70大学からも多くの優れた取組みが挙げられており、短期大学とともに評価機構ホームページにおいて優れた点として公表しているので参照されたい。

評価機構では、専門職大学及び専門職短期大学も機関別認証評価の対象として、令和7年度からの第4期認証評価の各種実施大綱及び評価基準を令和5年度に文部科学省へ届出た。

第4期では、内部質保証の実質化を促進し、大学の特色の進展に資する評価を更に強化するとともに、評価方法の効率化、評価の負担軽減などを中心に評価システムの再構築を行い、受審校の教育研究等の活動の自律的な展開をはじめとする内部質保証の更なる充実を支援することを目指している。

詳細については、4月23日にアルカディア市ヶ谷(私学会館)で開催した第4期認証評価の説明会において解説した内容はオンデマンド配信を行っており、評価機構ホームページに掲載しているので、ぜひ確認されたい。

(評価事業部部長兼評価研究部部長 陸 鐘旻)

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