令和6(2024)年10月23日分掲載
創立20周年記念を迎えて
評価充実協議会について
日本高等教育評価機構(以下「当機構」)は、認証評価に関する大学相互の共通認識を深め、協力体制を構築し、認証評価制度の充実を目指すとともに、教育の質の維持向上への啓発を目的として、毎年度「評価充実協議会」を開催している。
令和6年度は当機構の創立20周年事業の一環としての特別プログラムを企画し、令和6年7月9日(火)に東京のアルカディア市ヶ谷を会場として対面ならびにオンラインでのライブ配信の併用により開催した。
今回のプログラムは、基調講演として「高等教育政策の動向について」と題して、文部科学省高等教育局大学教育・入試課課長補佐の山田研市氏にお願いした。実は、この講演は古田和之課長にお願いしていたものだったが、古田課長が九州大学に転出されることとなったために急遽、山田補佐に変更されての講演となった。古田課長は、このようなご多忙の中、会場に来られて、参加者の皆様に冒頭ご挨拶をされた。山田補佐の講演は、1.中央教育審議会の審議動向、2.大学設置基準等の改正、3.認証評価制度の改善、4.私立学校法改正の状況、5.教育未来創造会議の提言、6.令和6年度予算の概要であった。なかでも、第12期中央教育審議会大学分科会高等教育の在り方に関する特別部会の審議内容「急速な少子化が進行する中での将来社会を見据えた高等教育の在り方について」の解説は、グランドデザイン答申以降の高等教育を取り巻く変化も踏まえて、特に参加者の関心が高かったように推察された。
次に、パネルディスカッションとして「今後の認証評価のあり方等について―第4期の認証評価システムを中心に―」と題して、我が国の高等教育の認証評価機関である5機関から解説をいただいた。このように我が国を代表する機関別の認証評価機関が集まって、今後の認証評価に対する考え方についてディスカッションすることは学会以外ではあまりなかったのではないかと思料する。時期的にも、「新たな時代を見据えた質保証システムの改善・充実について」(審議まとめ)が令和4年3月18日に中央教育審議会大学分科会質保証システム部会から発出されたところであり、この中で「認証評価制度」についても触れられており、今後の認証評価制度の方向性について、評価機関としての議論が必要と思われたところである。最初に、当機構の常務理事・事務局長の伊藤敏弘氏から「内部質保証の実質化へ向けて―第4期評価システムを中心に―」として第4期評価システムで目指す内容について解説があった。冒頭、「本機構の評価システムは、大学の内部質保証の実現に寄与しているが、社会からの理解度向上のための支援や評価を受けることの負担軽減については課題がある」として、①内部質保証の実質化の促進、②文部科学省の提言等との整合性、③大学の特色の進展に資する評価をさらに強化、④大学が社会の支持を得るための支援の強化、⑤評価方法を効率化、⑥大学・評価員双方の負担を軽減、⑦評価校へのフォローアップをシステム化する、の各項目について説明があった。続いて、国立大学の認証評価の観点から、独立行政法人大学改革支援・学位授与機構研究開発部の嶌田敏行氏に「評価者+被評価者からみた3巡目認証評価と4巡目への展望」として、今後の4巡目へのエッセンスと考える部分等の解説があった。冒頭、「4巡目の基準等は、現在、パブコメ受付中であり、発表内容は確定していない」との発言があった。3巡目の状況についての評価から、4巡目の基準等のエッセンスと考える部分について、さらには今後の在り方についても言及された。次に、大学基準協会常務理事・事務局長の工藤潤氏から「第4期機関別認証評価に向けた改革―『学習成果を基軸に据えた内部質保証の重視とその実質性を問う評価』を基盤に―」として、認証評価システム改革の流れと過去の評価結果に見る大学が抱える課題について詳細に述べられ、第4期認証評価の改革の方向を説明された。内部質保証について、社会が大学を評価するとの考えのもと、認証評価機関には質保証機能を具備することが求められているが、大学の質的向上に寄与する評価を一層徹底させていくことの重要性などの解説をいただいた。
次に、大学・短期大学基準協会理事の志賀啓一氏から「今後の認証評価のあり方等について―第4期の認証評価システムを中心に―」として、4巡目に向けた課題の解説提言があった。全体的な変更内容として、①評価基準から「観点」を外し、参考的項目にすること、②内部質保証ルーブリックの改訂、③各種法令への対応、④評価結果の書式変更の検討、などについて報告された。最後に大学教育質保証・評価センター代表理事の近藤倫明氏から、評価センターの設置理念・目的の紹介に始まり、「認証評価第4期における大学教育質保証・評価センターの評価」として、3つの基準全体を通して内部質保証を評価するという評価センターの評価の特色等について解説があった。その後、総合討論に入り、評価機関として今後の評価の課題解決への意見等を出し合って魅力ある内容になったと考えている。特に、審議まとめに示された1内部質保証において優れた取組等を実施していると評価した大学に対して、次回の評価内容及び方法の弾力化を図ること、2大学の教育の質的転換を促進するため、各大学が学生の学修状況の把握・評価の実施状況についての評価に取り組むこと、3評価の過程において、認証評価と社会との関係強化等の観点から、高等学校、地方公共団体、企業、学生等からの意見聴取に取り組むこと、4認証評価に係る各大学の負担の軽減のため、国立大学法人評価などの他の評価における教育研究に関する評価資料及び結果も活用した評価に取り組むこと、の中から、「内部質保証において優れた取組等を実施していると評価した大学に対して、次回の評価内容及び方法の弾力化を図る」に関しては、大学の中においては、良いことだとの評価があるものの、実際の適用においては適正な認証評価を実施する立場からは困難が予想されるとの意見が多いように思われた。
大学に対する認証評価の重要性は、いかに大学が己の力で改革を行い、学生や保護者の満足を引き出し、そして日本社会の活性化の原動力として自己実現を図る中で役割を果たすかにある。
当機構として、いかに社会が変化しても、大学に寄り添ったピアレビューの在り方を求めつつ、各大学の発展に寄与していきたいと念じているところであり、また機会があれば、認証評価機関の間の議論を進めていきたい。
(理事長 安井利一)