日本高等教育評価機構だより

令和7(2025)年1月22日分掲載

評価機構の自己点検・評価と外部評価
―第2回を振り返って―

はじめに

日本高等教育評価機構(以下、当機構)は、令和3年度半ばから令和5年度にかけて、第2回目となる自己点検・評価及び外部評価を行った。本稿ではその概要について振り返る。なお、当機構の自己点検・評価等のこれまでの取組みは、表を参照されたい。

表 当機構の自己点検・評価等のこれまでの取組み

平成26年11月 当機構創立10周年を機に自己点検・評価の実施を決意
平成27年4月~平成28年3月 実施委員会と専門委員会を設置、第1回自己点検・評価を実施
平成28年3月~平成29年12月 外部評価委員会を設置、第1回外部評価を実施
平成30年9月~平成31年3月 審査会による確認(書面・ヒアリング)
令和3年10月~令和5年8月 第2回自己点検・評価を実施
令和5年9月~令和6年3月 第2回外部評価を実施、審査会による確認(書面・ヒアリング)

当機構の特性

前提として、当機構は次の二つの側面を有することを紹介したい。

① 公益法人として

当機構は平成24年度から公益財団法人として、大学の教育研究活動等の状況の評価の実施に関する公益目的事業を行っている。行政庁である内閣府に定期書類を提出し確認を受け、法人の事業の適正な運営を確保するために必要な限度において、報告徴収、立入検査、勧告、命令といった監督上の措置が執られることになっている。近年は、社会的な不祥事の発生により、各法人には自主的・自律的なガバナンスの強化が求められている。その取組みについては、公益法人の組織運営の基盤となる一般社団法人及び一般財団法人に関する法律が会社法を参考にしている関係から、その制度改正の動向を踏まえたものを促されている。

② 認証評価機関として

当機構は、学校教育法第110条に規定する認証評価を行う機関である。平成30年4月から、「学校教育法第百十条第二項に規定する基準を適用するに際して必要な細目を定める省令」に基づき、当該機関は自ら点検及び評価を行い、その結果を公表することが求められている。その方法については、少なくとも「評価基準」「評価方法」「認証評価の実施状況」「組織及び運営の状況」の4項目が記載された全体で10ページ程度の報告書を文部科学省に提出し、書面による確認に加え、中央教育審議会大学分科会認証評価機関の認証に関する審査委員会(以下、審査会)のヒアリングを受けることとされている。その頻度は、機関別認証評価機関では7年、分野別認証評価機関では5年に1回以上と義務付けられている。

第2回目の自己点検・評価

第2回目の自己点検・評価は、令和3年10月から着手した。実施体制は前回を踏襲し、自己点検・評価の基準を含む基本方針や自己点検・評価に関する報告書などを審議する「自己点検・評価実施委員会」(以下、実施委員会)と、それを補佐し現状分析を行い当該報告書案の作成に当たる「自己点検・評価専門委員会」(以下、専門委員会)を置いた。全ての職員がいずれかの委員として積極的に自己点検・評価に関わることが、当機構の特色である。また、「評価する者は評価されなければならない」という考えのもとに、認証評価の適切性、明確性、信頼性などを担保するためには、外部評価が不可欠であるという姿勢も堅持している。その過程で工夫した点を次に挙げる。第一に、認証評価機関として活動の有効性を継続的に検証する必要があるのは当然のことながら、これまでの経緯を踏まえ、1回当たりのスケジュールを5年と定め、機関別認証評価と分野別認証評価を含む事業全般の自己点検・評価を実施した後に、外部評価(外部評価委員会及び審査会)を受け、その結果を活用し適切な措置を講ずるという順番でPDCAが循環するよう整理したことである。第二に、審査会における確認にも対応可能な構成を念頭に報告書の作成方針や注意事項などを策定し、複数人で行う作業の標準化を図り、効率化や負担軽減に資する取組みを行ったことである。自己点検・評価の基準は、当機構の事業を全て包含するように「評価基準」「評価方法」「認証評価の実施状況」「組織及び運営の状況」「調査研究及び国際関係」の五つとした。前回の課題にも対応しつつ自己点検・評価を実施し、令和5年3月末を基準とする当機構における諸活動の現状、特色及び課題などを明らかにした報告書を同年8月に取りまとめた。

第2回目の外部評価

令和5年9月からは外部評価を実施した。当機構の外部評価委員会では、委員が限られた時間で有意義な審議ができるように、二つの点を整理した。まず、基準ごとに改善を要する点の内容の重み及び数を考慮して三つの区分による評価(「適切である」、「概ね適切である」、「適切でない」)を行い、その理由を概評として記述するという構成にした。次に、概評は語尾を書き分けることで、優れた点、改善を要する点及び参考意見を判別可能にするとともに優先順位の高い課題を明確にした。令和6年3月に取りまとめられた外部評価結果報告書において、当機構の取組みは適切であるとの評価を得ることができた。その一方で、「ハラスメントの防止に関する規程」の適用対象を当機構の事業に関与する者などにも広げることや情報セキュリティに関する点検を実施することなど、更なる取組みを望む貴重な意見が付された。外部評価委員会と同時期に並行して確認を受けた審査会では、財政基盤の安定性の確保や評価チームの構成について、優れているというコメントが得られた。他方で、ヒアリングでは報告書の読みやすさに言及があり工夫が功を奏す場面があったものの、事実ベースの記載が多いとの指摘があり、自ら課題等を挙げてその改善方策の検討を記載するなど、更なる充実が望まれるとの意見があった。

第2回目の自己点検・評価及び外部評価を振り返って

事務局担当者として実感した課題を次に挙げる。過去に筆者も大学職員として自己点検・評価に携わった経験があるが、規則と運用を照合し合致の有無を把握し、不整合が生じた場合にはいずれかを改めていた。今回の自己点検・評価で個々の点検内容を確認したところ、運用面を中心に適切と判断してしまうケースがあり、点検の手順に関する共通認識を持つことが実質化の鍵を握ると感じた。また、報告書には、第三者から見て納得感があるように注意して記述することとしたが、文章作成に工夫の余地があると思った。加えて、今後は公益法人としての説明責任をより一層果たしていく観点から、ガバナンス・コードを策定し、遵守状況を点検するとともにその結果を公表するなどの取組みを行う必要があるだろう。
創立20周年を迎えた令和6年度からは、結果の活用に鋭意取組み、当機構の組織及び諸活動について改善・向上を図っている。各種報告書などは当機構ホームページに掲載しているので、ぜひご高覧いただきたい。

自己点検・評価等のページ

QRコード

(総務部総務課主幹 佐藤仁美)

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